瀬織津姫とは?
瀬織津姫は、祓(はらい・はらえ)を司る、祓戸四神のうちの1柱。
古事記や日本書紀には一切登場しない女神です。
しかし、日本の神社には、この瀬織津姫を祀る神社が数多く存在します。
本来日本の神社の祭神は、古事記や日本書紀に登場した神様、
もしくは歴史上の人物である場合がほとんどです。
それなのに、瀬織津姫という全くの無名に近い神様を祭神として祀る神社が多いのは、
はっきり言ってかなり不自然です。
そもそも瀬織津姫は古事記や日本書紀に登場しない神様なのに、
その存在はどこに書かれているのでしょうか?
瀬織津姫の秘密を徹底解剖していきましょう。
瀬織津姫の謎
瀬織津姫と祝詞
瀬織津姫の謎を解く答えは祝詞にあります。
祝詞とは祭祀のときに神主が神の前で唱える詩の事です。
瀬織津姫の存在が確認できる祝詞は、
「六月晦大祓の祝詞」
という祝詞になります。
祝詞の内容は?
瀬織津姫の存在が確認できる
「六月晦大祓の祝詞」
の内容を解説します。
かつて天の神々が天皇に国を任せた。
しかし、任された天皇は地上を平定するが、人々はやがて罪を犯し始めるであろう。
そして、そのような罪を犯した者が現れたら、この祝詞を天に向かって唱えよ。その祝詞を唱えれば天の神々は、天にある岩戸の重い戸を開けて、
たなびく雲をかき分けて、神は祝詞をお聴きになる。そうすれば、高い山の頂上から真っ直ぐ落ちる滝の凄まじく流れが早い川の瀬にいる、
瀬織津姫という神様が、それらの罪を大海原に流してくれるでしょう。そして、その罪をハヤアキツヒメが飲み込み、
イブキドヌシがその罪を息吹にして放ち、
ハヤサスラヒメがその罪を完全に消し去る。
このような内容になっています。
お分かりの通り瀬織津姫は、このたった少しの記述にしか出てこないのです。
考察
先ほどの少ない記述から考察するに、
瀬織津姫は凄まじく流れの早い川の瀬にいることから、
「川の神様」「水神」
である事が分かります。
また、真っ直ぐに落ちる滝という記述から考察すると、
滝とは龍が空を飛ぶようにうねって流れ落ちることから、
日本では古くから龍に例えられることがあります。
漢字をみても、竜や龍に水を表す”氵(さんずい)”がつくことで滝、瀧となっていますね。
このことから瀬織津姫は
「龍神」
であることも考察することができます。
つまり瀬織津姫は、
罪を洗い流す水神であり、龍神である神様ということが分かります。
瀬織津姫と神社
瀬織津姫は白蛇の化身?
瀬織津姫は日本全国の様々な神社の祭祀として祀られているのですが、
瀬織津姫を祀る神社にはある共通点があります。
その共通点とは、
「瀬織津姫は白蛇」
という伝承が語られているのです。
例えば、神奈川県にある深澤銭洗弁財天の由来書にはハッキリと
「瀬織津姫は白蛇の化身である」
と書かれています。
さらには、岩手県の八幡平市の不動の滝にある桜松神社にも、
白蛇と共に瀬織津姫が祀られています。
このように白蛇と瀬織津姫は、同一の存在として語られているのです。
瀬織津姫=龍神=白蛇
先ほどの考察から瀬織津姫は龍神である事も踏まえると、
瀬織津姫は龍神は龍神でも白い龍
白龍であった事が分かります。
そして、瀬織津姫を祀る神社では、
「瀬織津姫は白蛇」
という伝承が語られている事から、
瀬織津姫=龍神=白蛇
ということになります。
瀬織津姫と同一とされる神様
瀬織津姫には同一とされる神様が五柱存在します。
その神様は、
「ミツハノメ」
「タカオカミ」
「弁財天」
「イチキシマヒメ」
「天照大神」
です。
日本神話の最高神である天照大神と同一神というのはにわかに考えずらいものがありますが、
こちらもきちんとした証拠が存在します。
しかし、その前にその他の四柱がどのような神様か解説します。
ミツハノメ
ミツハノメはイザナミが火の神であるカグナツチを出産した時に、
女性器が火傷をし、悶え苦しんだ際に漏らした尿から誕生したとされています。
罔象(ミツハ)という字は、龍という意味であると言われていて、
ミツハノメは龍神の可能性があり、
また水早女(ミズハヤオンナ)と書いてミツハノメと呼ぶ場合もあることから、
凄まじく早い川の瀬に立つ瀬織津姫とも一致します。
タカオカミ
タカオカミは最愛の妻、イザナミを奪ったカグツチに激怒したイザナギが、
カグツチを切った時に飛び散った血から生まれたとされています。
タカオカミの高は山の上という意味で、龗は龍を表すとされています。
龍は古来から水や雨を司る神として信仰されていることから、
タカオカミは水神であると同時に龍神であるとされています。
また、ミツハノメも川や滝に関する水神で、
タカオカミと一緒に祀られていることが多い女神です。
弁財天
弁財天はもともとインドの神様で、サラスバティという神様です。
この神様はもともと川や水の神様でした。
日本に入ってきた時に、蛇神であるウカノカミと集合し、
白蛇と共に祀られることの多い神様です。
そして、弁財天はイチキシマヒメと同じ神様という扱いをされています。
瀬織津姫とも同一神とされていますが、その理由には、
かつて瀬織津姫が祀られていた場所が、今では弁財天に置き換わっている
上記の理由から同一神と考えられています。
天照大神
では天照大神と同一神とされている理由は何なのでしょうか?
それは日本の神社の頂点、伊勢神宮にあります。
日本の神様の魂は、穏やかな側面の和御魂(ニキミタマ)と、
荒々しい側面の荒御魂(アラミタマ)の二つでできているとされています。
一つの魂なのに二つの側面をもつ神様の魂は別々に祀られることがあります。
伊勢神宮では内宮にある正宮に天照大神の和御魂が祀られていて、
荒御魂は荒祭宮に祀られています。
そして荒御魂が祀られている荒祭宮にはこんな記録があります。
伊勢神宮外宮の神官 度会行忠が1200年代に書いたとされる、
大和姫命世紀伊勢二所皇太神宮御鎮座伝記
鎌倉時代の書物、中臣祓訓解には、
伊勢神宮に祀られる天照大神の荒御魂には別の呼び名があると書かれており、
天照大神の荒御魂の別名が瀬織津姫であるとハッキリ記されています。
他にも兵庫県最古の神社である廣田神社には、
現在伊勢神宮の荒祭宮に祀られている荒御魂と同じものが祀られているとされており、
廣田神社の戦前の由緒書きには、
廣田神社は瀬織津姫が主祭神である
と記されていたとされています。
戦前には瀬織津姫と明記しているのに、
現在ではなぜか天照大神の荒御魂と濁しているのです。
そして、この廣田神社の奥宮とされている六甲比売大善神社の主祭神は、
今でも瀬織津姫とされています。
また、大阪市にある御霊神社にも、
主祭神 天照大神の荒御魂(瀬織津姫)
と書かれています。
このように由緒ある伊勢神宮や兵庫県最古の廣田神社、
大阪市の御霊神社などに天照大神は瀬織津姫と同一神という証拠が残されているのです。
まとめ
瀬織津姫とは大祓の祝詞にだけ出てくる女神で、
罪を洗い流す女神であり、水神であり、白い龍神である。
瀬織津姫と同一神とされる神様は五柱いて、その神様は
「ミツハノメ」「タカオカミ」「弁財天」「イチキシマヒメ」
そして日本の総氏神である最高神「天照大神」であり数々の証拠が残っている。
瀬織津姫=龍神=白蛇
ここまでのことが分かりました。
まだ謎の多い瀬織津姫ですが、今後まだまだ明らかになっていくかもしれませんね。
この記事で皆様の瀬織津姫への理解が深まっていただけていたら幸いです。